Medical 筋膜(コラム)

1分で読める筋膜の生理学

 

PTカズ
今回は,簡単に筋膜治療に関わる生理学についてショートコラムを書きました

筋膜の生理学

 

PatelとLieber(1997)やHuijing(1999)は筋張力の伝達の70%は腱を通して直列に力を伝達し,筋力の30%は並列の結合構造体によって伝達することを示した。

 

筋膜には種類があり,浅筋膜,深筋膜(筋外膜,筋膜腱膜),内臓筋膜(被覆筋膜,挿入筋膜)…etcが存在する。→以前のコラム『最近,なぜ筋膜なのか?』 より

 

その中の,深筋膜という組織には近年の研究で多くの自由神経終末被包性神経終末,特にルフィ二小体とパチニ小体の存在が明らかになってきた。(C.Stecco 2007)

 

そして,これらの小体や自由神経終末の被膜は,周囲のコラーゲン性線維と結合するため,筋膜の伸張はこれらの受容器を活性化させる.

 

そして,筋の停止は腱となり骨に付着しているというイメージを持つ方が多くいるかと思うが,実際には筋膜を展開してみると筋の約37%は筋膜に枝状に停止している.(Smeulders, 2005)
→コラム『筋膜マニピュレーション(Fascial Manipulation®)とは?』から【項目】なぜ,筋膜組織なのか?より

 

筋膜の展開は解剖学的に肉眼で明らかになっており,上腕二頭筋腱膜と前腕筋膜との繋がり,そして遠位の母指球筋と接続し近位には大胸筋との接続が確認できる。(Stecco.A 2006)

そのため,この全身を覆う筋膜の層の滑走不全は全身に波及し様々な機能不全を生み出す。

 

筋膜の滑走不全に関しては多くのストレスが影響する。
(こちらのコラム『最近,なぜ筋膜なのか?』に記載)

 

 

その中の1つとして,過用症候群がある。

 

滑走に関与するヒアルロン酸は,運動による体内の酸化(Phの低下)により,筋膜周囲のヒアルロン酸の増加を引き起こし,酸化によりヒアルロン酸の粘性が増大する。そのため結果的に過用症候群により筋膜の滑走性低下を引き起こしてしまう。

 

 

過用症候群による,シンスプリントアキレス腱周囲炎などの症状もこのような筋膜の生理学的,病理学的要因が理解できていれば考えが広がるのではないか?

症状はあくまでも結果であり,原因は別に存在する。

 

 

 

ヒアルロン酸の改善についての研究では

ココがポイント

・温度の上昇

・組織のアルカリ化

により可逆的に分解されることが報告されている。(Matteini P.2009)

上記の反応により,ヒアルロン酸はゲル状からゾル状に変化していく。

また,ヒアルロン酸の熱による反応は36℃以上から40℃の間で徐々にゲル状からゾル状への変化していくことも証明されている。

 

そのため筋膜の治療を行う際はただ【ストレッチ】や【筋膜リリース】するだけでは改善されることはなく,温度と組織のアルカリ化にも目を向けていかなければいけない。

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北海道の理学療法士_カズ

株式会社EzoReha(エゾリハ)代表取締役。「病院に行かない文化をつくる」がモットー。理学療法士の国家資格を取得後,札幌市内総合病院に12年間勤務しながら,大学院進学やイタリアへの理学療法士の技術を学ぶために短期留学,そして、現在では筋膜治療のスペシャリストとして全国各地から指導の依頼を受けている。2020年から株式会社EzoRehaを設立し、北海道を中心に理学療法士の知識を医療過疎地、高齢者、スポーツ選手や一般の方々に対して発信しています.理学療法士による地域の活性化を図り新たな社会モデルを作ることを目的としています。さらに詳しいプロフィールはこちらから

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